
堂々たる大日本帝国の銭湯はかくありき

高々と見上げる格天井は深くゝ重厚に輝き差し込む陽の光と響きあう
お江戸には大阪のような暖かい情の世界は薄いのだが、
銭湯だけはかなわないと今回も思い知らされた。
もちろん浴室内の至れり尽くせり充実設備は、
サービス精神あふれる大阪人ならでわのものなのだが
重厚な日本建築の美しさは到底勝負できる銭湯は少ない。
水風呂も無ければサウナも無い、
お湯は「早く帰れ」と言わんばかりの熱さで
実質重視オンリーの大阪人たちには理解しがたい世界観が
東京銭湯には今も息づいているのだ。
表で油を売っていたご主人は私の来訪を知るやいなや慌てて番台に戻り、
見かけない顔のおっさんに優しく「いらっしゃい」と微笑む。
一段高い番台はもちろんどっしりとした無垢板の一品物、
見上げれば凄みのある重厚な格天井。
品格ある窓たちからは夕闇前のなごり陽が遠慮がちに射し込み、
美しき日本建築のメリハリをさらに際立たせている。


ロッカー以外は完璧なディープジャパンクラッシック〜ええ色で光ってます

しかも見事な庭&縁側・・・最高の涼と憩いが約束されている
もちろん浴室に目を向けて感嘆の声を上げずにはいられまい。
ど〜んと正面奥には東京スタンダード、
おなじみ富士山のペンキ絵だがこちらは西伊豆からの眺め・勿論早川氏作。
右側奥には見事な九谷焼のタイル絵がタイムリーに、
紅葉の美しい紅色を発している。
かなりの年期ものだろうが元が元・・・ええもんは永い時を経ても、
しっかりと美しく輝くものだというお手本である。
そして中央はモザイクアートのタイル絵、
アルプス?の湖畔にゆったりと船が浮かび定番ならでわの
ゆったりとした時間の流れを提供してくれている。

この3大アートの美しき競演・・・どうよ!


この美しき紅葉のタイル絵に包まれる・・・この世の極楽


42度と東京らしからぬ温度の薬湯は立って入れる深さ・・・素晴らしき極楽


もちろんメイン浴槽は45度♯・・・自然と顔は引き締まる〜厳しき極楽
立って入るぬるい薬湯で癒され、
ビシッと熱い主浴槽で気合を入れる。
東京人は これを1〜2クールして、さっさと帰っていくのだが
「まぁ ゆっくり入って帰ってください」とご主人に言われた手前
そうそう江戸っ子のごとく根を上げる大阪人ではない。
来てはさっさと帰る東京人を横目にしっかり
カランからの水浴びをからめた
5クール、
ひょとしたら6クール・・・堪能させていただいた。
でも東京銭湯の気持ちいいところは、
帰る客が皆きっちり湯桶や椅子を元通りに片付けて帰るので
整然とした美しき銭湯風景がそこにある・・・
残念ながら大阪では滅多にお目にかかれない光景だ。


お客が引けばご覧の通り、美しき浴室の景色が・・・よろしおま!
どこを見回してもゴージャスなアート、
そして浴室の外にまで庭が設えてありこれでもかの贅沢。
「帝国」の名を冠するにあたり、こだわりまくったご主人の心意気が伝わる。


富士のペンキ絵に西伊豆ですの文字&九谷焼・章仙の銘


中央仕切りのモザイク上・・・照明のデザインもGOOD&浴室外側にも庭と縁台
もう ここまでやっていただくと、5ケロリン出すしかないでしょう。
圧倒的にデラックス、素晴らしいぜ帝国湯。
のぼせるほど楽しんで脱衣場に上がれば、
向かうところは一つ・・・そうきれいな庭の縁側だ。
初秋の涼やかな風にたるんだ肉体をさらし、
心地よくクールダウン。
外はしっぽりと日も暮れて・・・これぞ日暮里の正しい楽しみ方だ〜
などと、くだらん駄洒落をひとつ
お後が宜しいようで〜


ゴージャスな庭を前に醜き肉体を夜風にさらす悲しき46歳の秋


下足場正面・正面入り口の暖簾


すっかりニッポリ日が暮れた、東日暮里帝国湯の外観
荒川区東日暮里3−27−10