Amore八木の洒落徒然

2004年4月の日記

■2004年4月13日(火曜日)

 

バーテンダー Amore 八木 のオリジナル カクテル
風薫る季節篇

The skilled cocktail facing directions

桜花舞う季節を過ぎると 野や山には、様々な草花が咲き乱れ
夏の草いきれとは違う 爽やかで情緒ある‘風の季節’が訪れます。
ホテル アンビエント堂島にて バーテンダー業を再開しましたので この際、
柳緑花紅の候にふさわしい 薫り高いき逸品たちをご紹介しましょう。
ただし 19世紀末にフランスの芸術家に愛されてやまなかった美酒 アブサン
流れをくむ パスティス系のお酒を使うものがほとんどなので
パンパースちゃんなドリンカーには この崇高なる薫りと酔いの美世界
理解しうる処では無い領域に存在するのかも知れません。


Pasitis hight noon &
pernod julep

 

1, l'Oassis(ロアジス・・フランス語の「オアシス」、S・ランボーのレストランも有名)

ペルノ 40ml
ブルーキュラソー10ml
フレッシュ ミント リーフ20枚程度

以上の材料をクラッシュアイスと共にブレンダーにかけワイングラスに注ぎ
トニックウオーター15mlを注ぎ軽くステア する

細いストロー(あれば ブルー系)2本を刺し ミントの葉を飾りすすめる。

2、Pastis high noon(コートダジュールの昼下がりのイメージ)

パスティス(お好みで・・・私はペルノを使用) 1/3
アリーゼ(パッションフルーツ リキュール) 1/3
お水(お好みのミネラルでも鉄管ビールでも・・・) 1/3

以上の材料を氷と共によく冷してタンブラーやゴブレットなどですすめる。
ちなみに 私は、シェークします。

3、Alpain road(フレンチアルプスの牧草帯に続く路、緑の植物と風 牧場の恵み・・・)

ペルノ 40ml
グリーン ミント リキュール 15ml
牛乳 60ml

以上の材料を氷の入ったタンブラーに注ぎステアしてよく冷す(私はシェーク)。

4、La Terazza( ラ テラーサ・E ヘミングウェイ著 老人と海に登場するBAR(パブ)のイメージ)

ハバナクラブ 3Y  30ml
スーズ 15ml
パスティス 1tsp
オレンジ ジュース45ml
レモン ジュース 10ml
シュガー 1tsp
シェークしてクラッシュアイスを詰めたピルスナー グラスなどに注ぎストローを添える。

5、Psatis Jurep(ミントジュレップのパスティス版)

レシピはミントジュレップに順ずるので省略するが、パスティスを楽しむための
最上の呑み方の1つと考える。
ビジュアル、風味、清涼感・・・あらゆる意味で世界中のBARで提供される事を望むドリンクである。

6、Road Star(初夏のワインディングロードを駆け抜ける時に薫り高い高原の風を受けるイメージ)

ペルノ 30ml
ウオッカ 20ml
グリーン ミント リキュール 10ml

以上の材料をハードシェークしてよく冷えたカクテルグラスに注ぐ

7、Madam Alkaloid(妖艶で毒のある世紀末的な美しさの ご婦人のイメージ)

リレ ルージュ 40ml
ディタ ライチリキュール 10ml
パスティス 10ml
ホワイト ミント リキュール 1/2tsp
シャルトリューズ EVE 1/2tsp

氷と共にステアしてカクテルグラスに注ぎ レモンピールを搾りかけてすすめる。

志を持ち歴史やアートに心魅かれる バーテンダーにとって
アブサン(パスティス)とは、
憧れと恐れ そして神秘性を秘めた 不思議な魅力のをもつ美酒
なのである。
多くのバーテンダーは その扱いの難しさから(アニスの薫りが日本人には抵抗がある方が多い)
敬遠されがちな酒であるが‘伝説のパスティス使い’Amore 八木なら大丈夫!


普通のバーではあまり消費量は多くない 難しいリキュール達も Amore 八木の
手に掛かればご機嫌なカクテルに生まれ変わるので或る!

パスティスについての粋な台詞

ご存知 映画「TAXI 3]での ひとコマ・・・
今回は シルベスタ スタローン扮する スパイ風の追われる男を乗せて
疾走する TGV の横を TAXI が抜いていくシーン・・・
やわら コンソールパネル下のカバーが開くと 例のスイッチ類。
その中のひとつをON すると・・・ニトロ キットか ジェット タービンにでも接続したかのような
ゆらゆらと高温たなびくエクゾースト!
ロケットのようなすさまじい加速に‘スパイ風 ’の頬は震え 身体はバックシートへ押し付けられる。
「す 凄いな・・・燃料は何だ!?」・・・と問いかける
すると主人公のダニエル・・・してやったりの表情で振り返り・・・「パスティス です!」
「ダチが BAR やってるもんでねぇ・・・分けてもらってるんですよ!」
「お客さんも飲りますか!?」・・・「遠慮しとこう・・・」


梅田 紀伊国屋前での「TAXI 3」実車&杜人
(携帯のカメラ〜プリント・・・なデータにつき画像の悪いのはご容赦の程を。)

いかにもマルセーユの土地柄を踏まえた お洒落なフレンチギャグである。
ストーリー性からの必然など 全く無視しながら ただ ひたすらに ハイパー406タクシーのかっこ良さを追求する
超お馬鹿ギャグ満載映画で有るが、所々にこだわった演出がセンス良く?ちりばめられ
そこが また たまらなく愛おしい・・・私が大好きな映画です。

今回の引用書籍は、「リッツ パリのカクテル物語」から

挿絵は、植田 洋子さんのものです。(里文出版 製)

 

順法精神の旺盛な方は、この下は 見ないで下さい。


文部省、警視庁 及びPTA関係の方の閲覧は法により禁じます。

3月某日 私が以前勤して居りました BAR  A○○○M I Sにて息子 杜人は
モーツァルト カプチーヌ(クリーム リキュール)を、クラッシュアイスと共にシェークしてもらい
何と 2杯も呑みました!・・・「まだ飲むっ」て言いましたが、法治国家 日本の正しい父親として
「もう 止めなさい」・・・と威厳たっぷりに言い放ったのだった。


元はと云うと 某 千里丘のこだわり量販酒店にて、試飲用に並べられていたリキュールを
味見させたところ・・・世界最小のウイスキー蒸留所として有名なスコットランドのシングルモルト
エドラダワーが造るクリーム リキュールに感動して嵌ってしまった
のである。
若干 ハイになった程度(解るか判らないか位)で あまり酔った感じは無かったのが怖い?

 


■2004年4月29日(木曜日) 

 

ハート ブレーキーな夜に呑む‘男の酒’

春たけなわ 陽炎の燃え立つような熱く晴れた日もあれば、
冷たい霧雨が堂島川に纏う 物悲しき夜も有り
近頃の天候の変化には いささか呆れたものである。
41歳 適度以上に脂の乗った中年男の人生も 似たり寄ったりの・・・
と云うほど 燃え立つような‘春’が訪れた訳でもない。
・・・ただ、陽炎と云う表現は 幻・・・的であり 何となくあの夜の私にかなりぴったりとくる様だ。

前日の日記にも 心の傷を癒す自分なりの方法論が有るとすれば・・・
私の場合 真っ先に選択すべきは、やはり‘美酒’である。
いい酒は 決して偶然に生まれる産物では無く、
‘素敵な心と感性’を持った生産者により、‘たゆまぬ工夫や努力’の連続の末に生まれる
「芸術的農産物 」なのである。
良い酒に出会うと云う事は そこに必ず良き生産者との出会いが存在し、
その酒は「農産物」で有るが故に由緒正しき故郷が存在する。

ハートブレーキーな夜には、そんな良き出会いと心の旅を味わう事によって
より上質な現実逃避が出来 そしてグラスを重ねる度に
良き生産者の‘努力’に触れ自分を鼓舞させることも出来る。

美しき火の酒を飲もう 今夜は・・・
そして 付き合ってもらおう美酒たちよ・・・お互い・・・バッカスに魅入られた友として。


まず最初の美酒は(正確にはここに来ての・・・)

@ハイランドパーク 1988年産(S・M・S ボトラーズ)

先ずは 穏やかで穀物由来の旨味が程よく溶け込む
世界 最北端の?蒸留所 ハイランドパークの’88

爽やかな白い花、麦芽糖、新しい紙、ミルク珈琲・・・的な香り
味わいは好調時のハイランドパークに有る突出しないアルコールの刺激や
穏やかながらきめ細かく滑らかな旨味。
少し開栓後の時間経過のせいか少々くたびれ気味だが好印象、
くたびれる前はさぞ旨かったろう・・・の感。

そう云えば去年のTVニュースで‘鱈漁禁止’の 話を聴いたが
イギリスと云えば‘フィッシュ&チップス’の国。
鱈が獲れなくなったら いったい何を・・・
そして あんな北の海で鱈を獲るなって云っても他に獲れそうな魚なんか無いのに・・・

続いてはおフランスから

A シャトー グリエのフィーヌ

この店に来て最初に私の目に飛び込んできた酒だ。
コート デュ ローヌ 最上の白ワインでコート ロティー、コンドリューの隣の
ほんの小さな そして極めて生産量の少ないA・C がこのシャトーグリエのワイン。
フィーヌとは搾りのこしの種、皮ごと蒸留する マールやグラッパと違い
一番きれいな窄汁(ぶどうジュース)以外の窄汁から採ったワインを蒸留した酒
と思っていただいてほぼ正解。

オードビー(命の水・蒸留酒) ド ヴァン(ワイン)でありブランデーには無い
野趣あふれる香味が魅力である。(ブランデーには洗練性という魅力がある)

最初は閉じているが そう時間もかからずに開いてくる。
百合の花、パラフィン、ワックスや石鹸、洋ナシ、青海苔、かすかに干しあんずなどの香り
華やかでフルーティーなコンドリューを 少し地味?にして(鄙びさせて)
ドライフルーツ的 凝縮感のある旨味系ワイン‘ シャトー グリエ’の特徴は
時間が経てば経つほどはっきりする印象。

オイリーにまとわる舌触りと青海苔様の香ばしく鼻をくすぐる香りが
その個性の存在感をはっきりと示す。
この次にこの酒を呑みに行く時はアップルパイとピスタチオをアテに持ち込もう。

この店での最後(つもり)の酒は

Bグレン グラッソー 1973年産(ハイランド ディスティラーズ FSシリーズ)

現在閉鎖中のいわゆるサイレントモルトである。
レモングラス、ディル、ミント様の爽やかなハーブ香
そして、この酒にも石鹸、パラフィン的なエステル香があり
味わいは極めて‘おとなしい’という表現が当てはまるデリケートな酒である。
日本酒に例えるなら静岡産の本醸造〜磯自慢的な奥ゆかしい旨味である。

ある本のテースティングノートでは‘閉じている’、‘ぼやけている’といった
好ましくない表現の羅列があったが グラスに注がれた この酒には
そういった 淋しい印象は無く むしろ少々くたびれた41男には優しくしみる旨酒である。

この酒が今回の日記を記す事になった‘恩人’?のビンテージモルトである。
今夜の時間旅行の終焉に相応しい酒をと・・・考えた結果 見事ぴったりの酒が有った!
バー クルラホン(ROSOLIO・・・現 中々の4F)に感謝!

1杯のつもりが 結局この酒を2杯飲み干し
すっかり 気分も晴れやかに・・・明日からの新生活?に勇気をチャージしこの店を後にする。

帰る道すがらにROSOLIOで働いてくれていた‘ズッキー’が開店した店があった。
先ほどで充分に満足し充填完了のAmore 八木の筈だったが
ネオンサインと人とのふれ合いにめっぽう弱い私は、
吸い寄せられるように ビルドアシティーに・・・


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このBARでもやはり火の酒を飲む。
Cレダイグ 15年(北ハイランドモルト)と
Dファイッティング コック 15年(ケンタッキー ストレート バーボン)だ。

実は15と言う数字もこじつけなのだが・・・

5種類の美酒やクルラホン、ビルドアシティーのバーマンにつき合わせて
ハートブレーキーな男の夜は
心地良く そして、静かに幕を降ろしたのである。

男と言うのは、かくも滑稽に
そして無理なロマンティックを愉しめる愛すべき? 生き物である・・・という事を
夜のご婦人方は あまり 知る由も無く、
酒はこの様な生き物に愛されるが故にその品質に磨きをかけ続けるのかも知れない。

愛すべき美酒に、そして
美しき酒を愛する 可愛い男たちに乾杯!

 


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■2004年4月28日(水曜日)

 

ハートのビタミン・・・やっぱり極上の音楽は
宜しおまっせ!


上原 ひろみ の衝撃JAZZ PIANO `another mind'

心が風邪をひいたとき、人は何かに心のビタミンを求め
酒や音楽や・・・ 場合によっては、何かそれに代わるものに救いを求める。
自分にとっては それが極上の音楽であったり 美酒であったりする。

思えば若い頃 浴びるように安酒(私の場合、若い頃から旨酒重視だったが)を 呷り
乱痴気騒ぎで紛らわす ことが有ったり(それも若さゆえに楽しくも有り、許されもした?)したものだ。
世の中の‘酸いも甘いも’に触れ、強烈な悲しみも経験した反面
‘素敵’って どんな事か などという事にもいささか 覚えのある大人になった今
やっぱり 自分には ‘美酒’、‘良い音楽’、そして友の存在が何よりもだろう。

写真の 上原 ひろみ を、最初に見た(聴いた)のは私も皆さんと同様
キリンのモルトスカッシュのCMである。
はっきり言って不細工(失礼・しかも音楽には関係ない)!
でも 初めてCMを見たとき「なんじゃ このねぇチャン!すげぇ!!

そして先日彼女のライブの模様をTVで見た(聴いた)ときマジで ほんまに凄いって思い
感動・鳥肌で立ちすくんだものだった。
絶対!買おう!(Amore 八木はレコード派なのでCDをなるべく買いたくない傾向有り)

そして本日 タワーレコードへ・・・
実は或る人にプレゼントをしたいCD(ミッシェル ペトルチアーニ)を買いに行くの第一目的だったが
あいにく 置いてなくて しかたなく?こちらを購入する事に・・・。

「昨今の女性JAZZピアニストのデビューラッシュにピリオドを打つ! 」
と言うタワーレコードのセールスコピーに思わず同感!
大西 順子の時も感動したけど、でもこの子はもっと違う次元
日本のピアニストとしてのレベルの感動ではなく、超世界レベルである。
例えるなら、ゴンサロ ルバルカバを引き合いに出したくなる位に・・・
そう「アナザー マインド」と云うより「アナザー ディメンション」にいると思うのである。
17歳で チックコリアと共演・・・など様々なアメリカ音楽シーンの話題を独占したらしい彼女の
パワー、スピード、溢れるエネルギー・・・それらを支える卓越したテクニック!
ほんま宜しおまっせ!

そして もう1枚は

セターノ ヴェローソ(ブラジル)の`a foreigh sound'

正直言って‘渋い'・‘渋すぎる’!
なんと60歳にして初めて英語バージョンで出したアルバムらしいが
ボサノバ チックなブラジリアン サウンドのボーカルアルバムであるが、
ポルトゲーゼに有りがちな せわしなさが無く ラテン訛りの英語が見事(微妙ないい感じさ)な
クール&シルキー感を醸しだしてる!

バックのサウンドもそれに準じてクール、しかも最低限のラテンリズムで暑苦しくない!

年輪を重ねた男の魅力に 男前で有名な?Amore 八木もつい
参っちまったぜ!

ボサノバは大好き・・・でも正直極上となると 中々難しくて・・・
やっぱり JAZZ SANBA に成るけど STAN GETZのシリーズに戻ってしまう。
実際に聴くのもやっぱり・・・そっち系に。
でもこれも‘宜しおまっせ’

レコードやCDをよく買われる方には好く判って頂けると思うが
新しい音楽に出会いたい・・・でも、はっきり云って数々の山のような駄盤を掴まされ
無駄金払った自分に情けなくなり、そして・・・
ようやく 辿りついた極上盤に出会えた時の嬉しさと言ったら・・・。

あぁ もう辛い事忘れてるかも・・・。

P・S そうそう、17歳でチックコリアと・・・で思い出したけど

知る人ぞ知る 日本のプログレッシブ ロックの名盤
アインソフの妖精の森

過去 幾度と無くハートブレーキーな夜に私の酒に無理やり付き合わされた彼らの‘ 組曲 妖精の森’ 。
そして そのアルバムの中でに ひときわ輝きを放つ若きドラマー 名取 寛・・・彼も当時17歳
ほんまかいな?・・・と唸ったものである。